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「奈良自助具の部屋」資料室
自助具製作心得・発案編
一般的な自助具の発案に関する示唆や留意点を示したものです。
基本的には、「奈良自助具の部屋」の”自助具は当事者(利用者・依頼者)自身で製作する”という原則と、”当事者(利用者・依頼者)の視点に立つ”という理念に沿って考察しています。
★ 製作(作業)に関して
- 誰にでも作れる物(より多くの人が作れる物)
全国どこへでも打ち合わせや製作指導に出張できるわけが無いから、色々な意味で、できる限り、誰でも自分で作れるような物を考案・提供する。
- できるだけ簡単に作れる物
構造上、できるだけ簡易な物を。あまりに凝りすぎて同じものを作るのが困難と言った物、微妙な調整が必要な物など、再現性の低い物はNG。また、特定の技術を持った人、熟練者でなければ製作は難しいといったものもNG。
- 製作に特別な工具が必要でない物
構造的には難しくなくても、製作に数十万円もする工具や、特別な作業場所が必要な物はなるべく回避する。
★ 材料に関して
- 手に入りやすい、一般的な材料を選ぶ
どうしてもそれで無ければならないという場合を除いて、なるべく特殊な材料を使わない。どこにいても、すぐに手に入れられるような材料を。
- 価格の安い物を選ぶ
どうしてもそれで無ければならないという場合を除いて、なるべく安価な材料を選ぶ。百円均一ショップなどを大いに利用する。お金を掛ければ良い物が出来るのは当たり前。しかし、既製品がない場合を除いて、高額な商品を購入することが困難な人が多いから自作するのであって、そういった者を対象に、大金を掛けて製作し、高額で販売するというのは本末転倒。
- 加工が簡単な物を選ぶ
切ったり、削ったり、磨いたり、あるいは接着したりするのに特別な労力が必要な物はなるべく採用しない。
- 加工の必要のない市販品を賢く利用する
材料の加工等、一から作るのではなく、市販品の応用や組み合わせで手間が省けたり、見た目がきれいに仕上がることもあるので、事前によく調査・検討する。
- 機能、安全、使用条件にあった材質を選ぶ
水回り等で使う物なら、なるべくカビや腐食の無いよう、木を使わず、アクリル等の樹脂を用いるなど、使用条件を考慮すること。また、毒性のある材質は用いないこと。
★ 使用に際して
- 誰にでも扱いやすい物を
色々と凝って作った結果、利用者が使い方に悩んだり、使用する毎に準備に時間がかかるような物はNG。自助具であるのだから、独力で使えることが必須。
- できるだけメンテナンスの必要がない物を
使用していて度々故障したり、調整が必要だったり、消耗品が必要になるようなものは支援者にとっても手間だし、利用者のストレスにもなるので極力避ける。また、永く使えるように、丈夫で、清潔が保たれやすいこと。
- 本当に役立つ物を
自分が苦心して考案・製作した物に愛着を持つのは分かるが、それにこだわってしまい、実際の利用者の使い勝手や評価を無視して、ただ漫然とリピートを作り続けていたのでは、結局は使われることの無い、自己満足の製品で終わってしまう。
利用者の「ダメ出し」に反発していたのではダメ。
利用者にとって、本当に役立つ物を作るには、利用者の使用状況や製作物を、フィットしているか、不具合がないか等絶えず評価して、常により良い物への移行や改良、ニーズへの対応といった努力を惜しまないようにすることである。
★ 性能に関して
- 見た目が大事
利用者が要望する機能・性能を満たすことは当然ながら、見た目・デザイン性も同じぐらいに大事である。汚らしい、みすぼらしい物では使う人の心理に影響する。
使いたくない、あるいは使っているところを他人に見られたくないと思うような物は自立支援にならないばかりか自立の妨げにさえなる。機能に支障がないように、デザインにも配慮する。
- 機能性に最大限配慮
何より機能が大事。こんな製品なら使わない方が容易、早いといったことの無いように、確実に効果が期待できる高機能な製品を。
また、目的にあった機能の製品を選択する。基本的に代替機能製品の選択はNG。
それから、訓練用なのか、日常生活用なのか、明確な理由、意図がない限りは、使用を分ける方が良いと思う。
両方兼ねた物は便利だと考えがちだが、誰も生活の場にまで訓練など持ち込まれたくないはず。本来、道具を使えば楽に出来ることを、道具を使わなかったり、機能の不足している物を使用したりと、無理に不便な思いをしながら暮らすことはないと思う。道具を使うのは生活を快適にするためなのだから。
- 幅を持たせる
個々人の心身機能・身体構造・サイズ等は千差万別なので、自助具は、基本的には利用者に合わせて、きめ細かい調整や配慮、利用者の要望を聞き入れる等、個別仕様が望ましい。製品を規格化、固定化するのでは無く、できれば幅を持たせたり、調整可能な物を。
また、色や素材、デザインについても選べるように、多数のバリエーションがあるとベター。
製品フォーマットはあっても、すべてカスタムメイドであるという意識で臨むことが必要である。
- 安全に使える物を
利用者が使ってケガ等をしないように仕上げ等には細心の注意を払う。例えば木で製作する場合、鋭角な部分や、ささくれ等が一切無いように仕上げは丁寧に、確実に行う。利用に関しては、使用することで心身機能が低下してしまうような弊害、悪い副作用等が無いよう、適宜、医療関係者等との連携が必要。
- 良い自助具のために
とにかく、利用者に最も適した自助具を提供することが目標。それには、利用者の話をよく聴き、動作をよく観察して、利用者の目的と身体的な機能を十分に理解することが大切である。利用者の身体的な機能を十分理解してないと、作った人には使えるが、利用者には力が足りない、手がそこまで曲がらない等、使えない場合がある。
また、利用者が出来ないこと、不便なこと、困難なことに気づき、それらの解決方法を考えていく。どちらか一方的にではなく、利用者と製作者が共に考え、作ってこそ良い自助具が出来る。(インフォームド・コオペレーション)
技術の良いところは理念が無くても支援可能なところだが、本当に良い支援をしようと思えば、しっかりした理念も必要。
物作りが好きだとか、工作が上手なだけでは良い自助具は作れない。
★ その他
- 製作(自作)にこだわらない
既製品を購入する方が「安い」とか「早い」、あるいは「使い勝手が良い」のなら、自作する必要はない。迷うことなく購入を選ぶべき。利用者(あるいは援助者)の目標は、「(自助具の)自作」ではなく、「自立(援助)」なのだから。
- 技術は公開する
考案・体得した製作手順、材料、費用等はより多くの人が利用できるように公開する。不明点等、相談を受けたら分かるように説明する。利潤追求や手柄、名誉が目的ではないはず。「知的所有権」などというケチな了見は別世界の話。
- 良いものは取り入れる
こちらの技術等は公開するから、という訳ではないが、他者が作った物で、良いと思える製品、長所などは遠慮無く、こだわりなく取り入れる。もちろん、最初に考案された方に対して敬意を払うことは忘れない。ただ、どこの誰が作っても良い物は良いし、利用者には関係無い。「真似されて悔しい」とか「先を越されて悔しい」等、ナンセンス。
- 誠意を尽くす
すべてに当てはまることだが、誠意を尽くす。
いい加減に作った物と、気持ちを込めて作った物とでは自ずと差が出る。機能重視で、使えさえすればいいと言って下さる方もいらっしゃるが、その時の条件の中で、ベストを尽くして製作する。持てる力は惜しまず投入する。
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